平成22年4月の相談
22年4月の相談
私は昨年6月にヘルパー2級の資格を取り、10月から今の事業所で仕事を始めた46歳のヘルパーです。
登録ヘルパーで働き始めましたが、ヘルパーが恒常的に足りないというお話しで、できればフルタイム働きたい気持ちが(必要が)あることを伝えていたところ、常勤で働いてみないかと声をかけていただきました。楽ではないだろうと覚悟はしていたつもりでしたが、やってみなければわからないと思い、2月から始めました。
ところが、試用期間3ヵ月なのに、2ヵ月目の半ばで登録ヘルパーに戻ってほしいと言われました。
私が主任の指示に従わないから、というのが理由らしいです。
指示書にないことをしてはいけないことは理解していますが、利用者さんが今困っているというときに多少手を出してしまうこと・・・その場で介護保険のルールの説明をしなければいけないのは、現実の時間のない中で私には納得しきれないものがあります。
主任の方が苛々していて、気に入られてない雰囲気を徐々に感じていました。ですが、次回から具体的にどのようにすれば利用者さんに納得していただけるかを指導してくれるという雰囲気ではなく、私のほうはますます聞きたいことも聞けず、報告したいこともしたらいいのかどうか迷い言い出さずに終わるようになってしましました。
仕事はどんどん入れられていたので(これもいびりかと勘ぐる位)、それでも現場で地道に頑張って認められるしかないと思って必死でスケジュールをこなしていたところです。
忙しいのもわかりますが、利用者さんを感情的に呼び捨てたり(私だけがサービスに入っている利用者さんでした)、何を言っても「それじゃあダメよ!」ではこちらも聞く気持もなくなります。
仕事はできるだけ今までどおりしてほしいとのことでしたが、今月から半分に減らされました。予想はしていたので、無理そうだったゴールデンウイークに連休をとることにはしましたが、介護の現場はなんて意地悪でヘルパーを育てる気持ちがないんだろうと思います。利用者さんとの出会いは心の糧になったので感謝しています。
社会人としては20年近く経験がありますが、介護の仕事は初めてなので、人手がないと言いながら、新しい人を受け入れない職場環境について一番聞いてみたいと思います。
介護支援専門員:西和子先生のお答え
ご相談いただきありがとうございます。
人手が足りないところを少しでもお役にたてるならと、初めての介護の仕事に頑張っておられる姿が目に浮かびます。新しい仕事に就いた時は自分自身に期待して、また仕事に対しても期待をもって、職場の人たちからも期待され、利用者さんからも期待されてきたと思います。
対人援助の仕事はトレーニング(知識と技術の習得)と多くの経験の積み重ねが必要ですが、職場や働くことへの理想と現実のギャップも感じると思います。新人であったり、職場の先輩や上司とうまくいかない場合などはなおさらです。仕事に対するいろいろな制限、職場の人間関係、労働時間、給与など問題も様々です。
お問い合わせについて、いくつかの考えをあげてみます。
*介護保険が始まって10年が過ぎましたが、介護の現場はまだまだ未熟です。
介護事業所の中心になるサービス提供責任者もしっかりとした責任者としての教育を受けている人ばかりとは限りません。責任者はスーパーバイザーとしての役割を担っていますが、責任者としての仕事への認識不足、スーパーバイザーとしての自身の未熟さ、また人手不足でぎりぎりのところで回っている職場では人を育てる環境を作るところまで行っていないことが多いです。
*チームケアでの仕事・・・まず相談する。
対人援助の仕事は、相手が人ですから信頼関係が基盤になります。信頼関係は利用者さんとばかりでなく、職場でも必要になってきます。コミュニケーションはお互いに相手の気持ちを理解しようとすることに始まります。在宅で一対一の仕事といえども、自分ひとりでの考えでは仕事はできません。職場でのコミュニケーションも必要になってきます。
時間を作ってもらって責任者としっかり話し合うことをお勧めします。
言いにくさを作っているのはどこからきているのでしょうか?
お互い理解の無い中での仕事は、しいて言えば利用者さんへのサービスに跳ね返っていくことが考えられます。サービス中の事故になるとも限りません。利用者さんが望んでいることだからといって、自分の考えで仕事をしてしまうとチームケアからは外れたことになってしまいます。仲間からも外れ遠くなってしまいます。
*相手の姿は自分の行動の結果と考えてみる。
自分中心に物事を考えると、自分にとって良くないことが起こると相手を責めたくなったり、批判的に見下したりします。人のせいにしてモチベーションを自ら下げていくことにつながります。
新人を受け入れようとしない職場にも問題点があると思いますが、働いてもらいたい人を増やすことについては、みなそのように希望していると思います。受け入れようとしない職場環境に対して、自分の何が足りないのか振り返ってみる良いチャンスです。
*介護の現場ではサービスの仕事そのものよりも、職場の人間関係での問題を抱える方が圧倒的に多いと聞きます。辞めていく理由も多くはそこにあります。
一番の理由はコミュニケーション不足と思います。上司とよく話し合うこと、職場はあなたに何を期待しているのか、また、自分はこの職場で何を学びどのようになりたいのか、自己実現のプランを自分で作っていくことが大切と思います。
新人を受け入れようとしない職場環境とのことですが、もしあなたが、この職場の責任者だったら、反対にどのような新人を職場に受け入れるでしょうか?
私は、ヘルパー職に求める一番の要件として「素直さ」をあげます 。人は素直であれば、「人の意見を聞くことができる」のと「学びが早い」です。感情的になると物事を正しい目でみることが難しくなります。本質を見る理性の目(心の目)が閉ざされてしまうからです。
介護職は人のケアはよくするのですが、自分自身のケアを忘れがちになります。自分が元気であって、はじめて良いケアができます。休みにはご自身のケアをして、その貯めたエレルギーを仕事に生かしていってください。
元気なあなたを待っている人がそこにいますよ。
介護支援専門員:北田信一先生のお答え
「指示書にないことをしてはいけないことは理解していますが、利用者さんが今困っているという時に多少手を出してしまうこと…その場で介護保険のルールの説明をしなければいけないのは、現実の時間のない中で私には納得仕切れないものがあります。」
⇒ 介護という仕事は利用者の方の生活を支援することですから、必然とその生活に密着したケアが求められます。生活というものは日々変化しますし、突然に困ったことが発生することもあります。現場で直接利用者に接していれば、その生活の変化や突発的な出来事にも臨機応変に対応していくことが求められるわけで、それに応えていこうとする姿勢はとても大切なことだと思います。
一方で介護保険によるサービスを提供する場合には、介護保険法のルールを遵守しなければならず、時にはその狭間でご苦労されることもあると思います。
今回のご質問にある「利用者さんが今困っている」という状況がどのようなものなのか具体的にわからないと正しくお答えできませんが、このような場合、まずは「緊急性」「非代替性」で判断することが大切です。つまり利用者から指示書にないものを求められたとき、これは緊急を要するものなのか、私以外に代わりにできる人はいないのか、を判断します。健康や生命に関わる緊急なことであれば当然対応しなければなりませんが、それ以外の場合は「今すぐ必要で、私に代わってできる人がいない」ことはあまりないのではないでしょうか。「後で、誰かが代わりに」で良いものであれば、必ず「後で、誰かに代わりに」支援してもらえるように手配をすれば、利用者にも納得していただけると思います。
「介護保険のルールだから出来ない」ことを納得していただくのではなくて、私たちには出来ないが他の方法でこの問題を解決できるように努力することを伝え、利用者の方のお気持ちを満足させることが大切です。
これには、個々のヘルパーさんの確かな判断力とその後をしっかり支援するチームワークが必要となります。訪問介護はどうしても担当するヘルパーが孤軍奮闘しなければならない状況になりがちです。何かあればバックアップしてもらえるという安心感を持って仕事が出来るような体制の確立が求められます。
「次回から具体的にどのようにすれば利用者さんに納得して頂けるかを指導してくれるという雰囲気ではなく、私の方はますます聞きたいことも聞けず、報告したいこともしたらいいのかどうか迷い言い出さずに終わるようになってしまいました。」
⇒ 相談できないというのは辛い状況にありますね。受け入れてもらえる雰囲気がないと、ますます萎縮して、何も話せなくなってしまう気持ちはとてもよくわかります。
なぜ、このような雰囲気になってしまうのか。原因は一つではないと思いますが、私は次のような可能性もあるのではないかと考えています。じつは主任さん自身もどうしたら利用者の方に納得していただけるか、具体的な解決策を見つけられずに困っているのではないでしょうか。だから、答えられない、指導できない状況になっているようにも思えます。サービス提供責任者さんや管理者さんが、実は多くの悩みを抱え、誰にも相談できずに孤立していることがよくあります。自分自身が追い込まれているから本当はやさしく後輩を指導したくてもできない。そんな自分がまた嫌になるという悪循環に陥っている可能性もあります。上司と部下という立場こそ違え「利用者のためにがんばりたい」という気持ちは同じはずです。主任さんに対する見方を少し変えて関わってみたらいかかでしょうか。
頑張り屋で可能性のある新人職員さんと、経験豊富な優秀な職員さんで管理的立場になられた方が介護の現場を去っていく原因は、実はおなじところに根っこがあるような気がしています。どちらも孤立しているということです。この両者を孤立させない体制を運営事業者や行政などが一緒になってつくっていく努力をしなければいけないと日々感じています。
